インタビュー
ベテラン社員:江田 尚史(ごおだ たかふみ/工場長)
Q:興味を持ったキッカケと、選んだ理由を教えてください。
子供の頃からプラモデルやミニ四駆、釣りのルアーなど、ものづくりに夢中になるタイプでした。気が付いたらもうこんなに出来上がっている、という感覚が好きでした。
高校では農業土木科に在籍していましたが、在学中にガス溶接の特別講習を受け、器具を使い金属を高熱で溶かして接合する「溶接」という技術に魅力を感じたのが興味を持ったきっかけです。
当時は就職難で選択肢が限られていましたが、偶然見つけた株式会社モリグチの求人に興味を持ち、入社を決めました。

Q: 20年前と現在ではモリグチはどんな違いがありますか?
私が入社したのは前社長の時代で、工場には昔ながらの鉄工所の雰囲気があり、職人さんが黙々と作業を行っていました。当時の従業員の見た目、話し方、言葉遣いは古典的な職人そのもので、建設業に持っていたイメージそのままでしたね(笑)。職場でも学校と同じように技術を教えてもらえると思っていたのですが、先輩からは「見て覚えろ」とだけ言われ、これが職人の世界なんだと感じた事を今でも覚えています。
時代は変わり、現在の職人は溶接だけでなく、パソコンで図面を描くことも当たり前になりました。モリグチでも新しい設備や工具を導入し、より円滑に作業をする為の仕組みづくりを進めてきた結果、効率的かつ生産性の高い会社へと成長しています。
Q: 会社が大きく変わるキッカケとなった出来事は何ですか?
前社長から現社長(息子さん)へ経営が交代したことですかね。時代に合わない古い慣習や無駄を見直し、社員を第一に考える会社へと生まれ変わりました。象徴的だったのは、ある社員の健康診断で病気が見つかったとき、社長が回復を願って琴崎八幡宮(宇部市)へのお参りを何年も続けていたことです。私はそのエピソードを後から知り、新しい社長が本当に社員を大切に思っているのだと強く感じ、感動しましたね。
Q: 工場で行なった改革は具体的にどんなものですか?
以前、仕事を続ける自信をなくすほど私の腰痛が悪化し、このままでは定年まで体が持たないと危機感をつのらせていた頃、偶然他社の工場を見学する機会がありました。その工場では、座ったまま作業を行ったり流れ作業を取り入れたりと、従来の溶接現場では考えられない効率的な作業方法が採用されていました。それを見て「これだ!」と強く感じ、自社にも合うよう工夫してモリグチへ取り入れました。

その結果、優れた手法をそのまま取り入れるのではなく、自社にフィットするように製造工程を一から見直したことで、大きな成果へとつながりました。
Q: 製造工程を1から見直すのは大変だったのでは?
正直、大変でした。ですが、全ての工程を見直せば必ず改善できる! という具体的なイメージが湧いていたので、不思議と上手くいく自信がありました。その自信があったので、社長に「100万円ほど投資してください。それで結果を出しますから」と伝えました。ポジショナーなどの機械や道具を一式揃えてもらい、スタッフに実践してもらったところ、作業スピードが大幅に向上し、身体への負担も減りました。溶接の仕上がりも格段に良くなり、複数人で行っていた作業が一人で完結できるようになったことで、省人化も実現。生産性が2~3倍良くなりました。こうした成果を受けて、社長にお願いし機械の台数を増やし、4~5年かけて工場全体を新方式へ変えていきました。この大改革により、忙しさで断っていた仕事が減り、他社へ流れる案件もほとんどなくなりました。
Q: これまでで1番印象に残っている「エピソード」を教えてください。
25歳のとき、腕に自信があった私は、上司から難易度の高い溶接作業を任されました。しかし、何回挑戦しても上手くいかず、最終的に社外の職人さんに頼むことになり、外注費が発生して赤字工事になってしまいました。この失敗で、自分は調子に乗っていたんだと慢心に気付き、細部にまで気を配ることの大切さや経験の浅さを痛感しました。
18歳で入社して以来、休憩時間も惜しんで先輩の技術を見て学び、誰よりも上手くなろうと努力してきました。工場で一番だという自負もありましたが、当時の自分には驕りがあったんだと思います。
失敗の理由をその職人さんに尋ねたところ、「やり方は合っとるよ。ただ、この工程のこの部分の作業が雑に見えた」「もう少し丁寧にやればできていたと思うよ」と言われました。全体はできているつもりでも、細部に至るまで神経を使って作業をしてなかったのが失敗の原因でした。「神は細部に宿る」とは言いますが、わずかなポイントを押さえられていなかったからこそ、何回やっても上手くいかなかったんですね。
この出来事で自信を失いかけましたが、チャレンジの機会を与えてくれた当時の上司には感謝しています。いま思えば、当時の自分は70点で十分という気持ちなっていたのかもしれません。「モノづくり」はどこまでいっても終わりのない世界です。自分がこれで大丈夫だと思った時点で終わってしまいます。
時代の中で変化することを恐れてはいけません。変化し続けることで、今よりもっと仕事がより良く、「楽」になると信じているからです。だからこそ、自分にとって現状維持はありえません。現状維持はむしろ「退化」だと思っています。安易に目の前の小さな「楽」を選ぶよりも、少し先の大きな「楽」を追いかけた方がいいですから。
Q 新人さんが入社してきたら、どういう風にサポートしようと考えていますか?
モリグチは昔から、先輩・後輩の上下関係がない会社です。役職者に対して忖度することもありませんし、フラットで風通しのいい関係性が築けていると思います。だからこそ、仕事以外の雑談、趣味や家庭の話もよくしています。
私の指導方針は、まずはグループ内のメンバーと打ち解けてもらえることを大切にしています。一緒に作業をしながら、簡単な日常業務から教えていき、その人の得意分野を見つけて伸ばすようにしています。大切なのは、「人を見極める」ことですね。その人がどんな人なのか想像を働かせることが大事かなと思っています。たとえば干山(※インタビュー1)は、1から10まで説明しなくても、自分で考えて動けるタイプだろうなと。もちろん会社としては、一定の技術レベルまでは身に付けてもらう必要があるので、基本は同じように教えます。ですが、人によって教え方のアプローチは変えています。細かく言った方がいい人か、あえて言いすぎない方がいい人かを見極めて教えていますね。
また、入社したばかりの頃は、業務だけでなく、職場の雰囲気や人間関係も分からない状態ですよね。だからこそ、新人にはいろんな先輩に付いて仕事を覚えてもらうようにしています。というのも、仕事を教わる中で、自然と会話が弾むようになるからです。仕事の話だけではない、お互いのプライベートな、「趣味は?」「家どの辺?」のような。そうするうちに、技術的な話もだんだん耳に入ってくるようになります。
特定の先輩だけに任せてしまうと、ほかの先輩と話す機会が減ってしまうので、担当は固定せずにみんなで教える体制をとっています。教える内容が重なることもあるかもしれませんが、教える中で質問をすれば、理解度も分かりますから。教える側が相手に合わせてあげることが大切です。理解が遅い人も、不器用な人もいます。だからこそ、難しそうなときはレベルを下げたり、逆に伸ばせそうな部分は上げたりしながら、作業者として一人前に育ってほしいですね。そして、モリグチで長く働いてもらえたら嬉しいです。

A: 「見て覚えろ」 は非効率
私は「見て覚えろ」と言われて育った世代です。しかし、「昔ながらの鉄工所」のスタイルやイメージは好きではありませんでした。そもそも、「見て覚える」のは時間がすごくかかりますし、最初からきちんと教えてもらえれば、もっと早く戦力になれるのと思っていたからです。見て覚えることも、時には必要な場面もありますが、職人さんは教えるのが苦手な人が多く、口下手な人も少なくありません。会社を大きくしていくには、人を採用して育成するのが肝心です。にも関わらず、従来の「見て覚えろ」方式は育成に時間がかかり、会社の成長も遅くなるという大きなデメリットを抱えています。時代は変わりましたが、いまだに昔ながらの教え方をしている工場も多いと思います。だからこそ、どこで働くか、どんな風に教えてもらうかはその人のスキルアップ、成長に大きく影響するとても重要なポイントだと考えています。
Q: この仕事で1番大切なことを伝えるとしたら何ですか?
自分の仕事に妥協しないことが大切です。妥協してしまえば、良いものは作れません。
例えば、70点の仕上がりでも最低限の合格点は与えますが、本当に良いものを作るには、それ以上を目指す姿勢が大切です。妥協してしまったり、これでいいやと思った時点で、70点すら取るのが難しくなります。
溶接技術の場合、見た目がきれいなリング状になっているのが合格ラインです。蛇行していたり、明らかに溶けていない部分があると不合格ですね。溶けていないというのは、溶着金属の溶け具合が中途半端な状態のことです。
お客さんから何も指摘されないレベルを70点とするなら、100点に近づけるには、もっと上手に、もっと早く仕上げていく技術が求められます。もし、70点で十分と考えていたら、成長はそこで止まってしまいますし、こちらとしても、より難しい仕事や責任がある仕事を任せようとは思えません。少し難しいと思える仕事にも積極的にチャレンジしてみてほしいですね。できれば、自分から志願するくらいの向上心を持ってくれたら嬉しいです。
Q: 今後のビジョンを教えてください。
鉄工所と聞くと、汚いイメージを持たれがちですが、私はそんなイメージを払拭していきたいと思っています。実際、私も最初は「鉄工所は汚くて当たり前」と思い込んでいました。
ところが、同業他社の工場を見学させてもらったときにその考えを改めました。規模は弊社の4倍程度あるにも関わらず、学生の見学を常時受け入れられるほどきれいな状態を保たれていたんです。清掃業者を入れてるのかと疑いたくなるほどで、同じ仕事しているのになぜここまで違うのかと不思議でした。話を聞いてみると、社内でそれぞれの持ち場を決めて、毎日そこだけは掃除するようにしているとのこと。さらに、週に一回は全員で掃除をする習慣があるそうです。これは見習わないといけないなと感じました。もちろん、普通に掃除はしていましたが、そこまでの徹底はできていませんでした。大掃除のような大掛かりなことまではしなくても、週二回、継続して取り組めば清潔な状態は作れると気づいたんです。ウチも一年計画で工場の美化に取り組み始めたところです。綺麗になれば汚しづらいかと思うので、今の状態を維持してもらおうと考えています。
Q: 趣味や好きなことについて教えてください。
釣りは小学校4年生の頃からずっと続けている趣味です。当時はバス釣りブームで、自転車で少し離れた一の坂ダム(山口市)まで通っては夢中でバス釣りをしていました。
バス釣りの一番の魅力は、「引き」の感触ですね。バス釣りは終わりがない世界なんですよ(笑)。地元の山口市から、防府市の「長沢の池」まで、自転車で遠征に行くほどハマっていましたね。その後はチヌ釣りにのめり込み、全国大会に出場するほど熱中しました。今でも、釣具メーカー「シマノ」のホームページに当時の大会の動画が残っています。
全国大会に出場するには、地方大会で上位2位か3位以内に入らなければならない、狭き門です。当時は大分県や高知県まで遠征して大会に出場していました。昔から一つのものに狭く、深くハマるタイプなんだと思います。今ハマっているのはゴルフです。
Q: 最後に新しく入ってくる方に向けてメッセージをお願いします。
モリグチは、未経験の方も多く活躍しています。資格取得支援などの制度が充実しているので、安心して長く働ける環境だと思います。
この仕事のやりがいは、自分が作ったものが形として残ることです。目に見える成果があるからこそ、大きな達成感を感じることができますし、知識や技術が身につくことで、自身の成長を感じやすい仕事でもあります。興味がある方は一度ご来社ください。話を聞くだけでもいいですし、かしこまった面接や入社の話ではなく、少し話を聞いてみたいくらいの気持ちで、気軽に連絡してもらえたら嬉しいですね。工場見学もできますので、現場の雰囲気を見てみるだけでも歓迎します。